アンサンブル

 アンサンブル、「調和のとれた」の意だが、音楽の世界では、弦楽器や管楽器など小編成の合奏をこう呼んでいる。
3月17日、北島町創世ホールで開催された「ミュージックの日コンサート」には、関西で活躍するレストロアルモニコ弦楽合奏団が出演し、弦楽アンサンブルの醍醐味を披露してくれた。

 プログラムによると、代表者の潮新一郎氏とチェロの氏橋敬司氏は、共に徳島市出身で、内町幼稚園の「すみれ組」からのつき合いだという。なんともほほえましい間柄だが、そんな二人が他の仲間達と8人編成の弦楽アンサンブルを引き連れて、故郷である徳島でのコンサートに臨んだ。

 当夜のメインプログラムとなった「弦楽八重奏曲変ホ長調」は、メンデルスゾーンの初期の作品の一つで、生で聴く機会の少ない曲である。それぞれの奏者の息づかいも身近に感じながらの、良く訓練された弦楽の響きは、30分を越える長大な曲でありながらも、時を忘れさせるほどに見事な演奏であった。演奏を終えた潮氏の汗には、演奏に向けられた情熱の名残が感じられ、清々しさを感じた。もちろん観客からは大きな拍手が送られた。

 架橋効果も含めて、若手が中心の、息のあった演奏を聴かせてくれる弦楽アンサンブルの存在が身近に感じられて大変嬉しかった。
徳島でもこんな弦楽アンサンブルが出来ればいいと思うのだが、演奏技術はあっても、現状はなかなか難しいものらしい。もとより個性の強い音楽家の集団である。意見の食い違いもあるし技術レベルの違いもある。一つの音楽を作り上げる過程での、こうした個性のぶつかり合いの上にアンサンブルは成り立っている。良い意味で競い合うのは結構な事だが、ステージ上で喧嘩さながらの演奏をしている場面に出くわす事もある。こうした場合にはまとめ役の力量が問われることになるのだろう。

 多くの演奏家がいながら、継続して活動の出来る弦楽アンサンブルが育っていない徳島の現状には、県民性と言う言葉では片づけられない何かがあるのではないのだろうか。
アンサンブルは最終的には人と人との調和から生まれる。長く時間をかけてつき合って行くことの大切さを感じさせられたコンサートでもあった。


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