ソフト

 子供の頃の私にとって、ソフトとはソフトクリームか、ソフトボールを意味する言葉であった。もともとコンピュータ技術の中で生まれた、ソフトウェア、ハードウェアという用語が簡略化され、ソフトと呼ばれるようになった。ところが、一般の人にとって、このソフトという概念を理解することは難しい。パソコンにはCPU(中央演算処理装置)と呼ばれる頭脳を持っているが、これに手順を与えるのがソフトの役目である。

 図体は大きく電子計算機と呼ばれていた昔、数字の計算が主な役目であったコンピュータは、性能の向上と共に、小さくなりパソコンと呼ばれ、ソフトの進化によって、あらゆる場面で活用できる道具に変貌してきた。「ワープロとパソコンとどこがちがうの?」よくされる質問である。ワープロも中身はコンピュータだが、ワープロの機能に限定して使い安くしてあるのだと説明する。かようにワープロは最も身近なパソコンでもある。

 ワープロから始まったパソコンの応用技術は飛躍的に発展し、編集、デザインなど出版分野から、音楽、写真、ビデオ、従来からのOAと呼ばれるオフィスでの事務処理、もちろんインターネットも含めて、応用される分野はまだまだ広がって行くだろう。これらはコンピュータの処理能力の向上と、ソフトウェア技術の進歩によるものである。

 パソコンが普及しだした20年ほど前頃からぼつぼつと出始めたソフトの開発を専門とする会社は急増し、時代の波に乗り急成長する企業も多く、経済界にまでも影響を及ぼすほどになっている。ソフト開発を仕事にしている会社の多くは、一人から数人の社員によって構成される場合が多いが、その数は徳島県内で250社を越えているという。中には1000人を擁する国内大手のソフト会社もあるが、最近は経営状況の悪化で話題を提供している。

 インターネットの普及した現在、日本のソフトウェア技術のレベルは世界的に見てかなり厳しい状況と言えるだろう。ソフト業界は頭がソフトでないと勤まらない。昨日習ったことが、今日は全く役に立たない場合もある。技術の進歩について行くことさえ大変な努力を要する。ソフト業界の人材不足は今に始まったことではないが、フレッシュな感覚を持った若々しい有能な技術者を育てる環境は、まだまだ整ってはいない。



戻る

powered by Quick Homepage Maker 4.81
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM