県民オペラ

 正月の本誌特集面では徳島県民オペラ発足の話題が大きく取り上げられていた。冒頭の三木稔さんの力強いメッセージから、県民オペラ旗揚げ公演への大きな意欲が感じられた。

 県民オペラは、総合芸術であるオペラを地元徳島に花開かせたいという三木さんの熱意を受けた県内音楽家たちが中心になり、公募によって会員を募り結成されたもので、旗揚げ公演は今年の11月に行われる。全国的に見ても、県民オペラの存在は珍しいものではなく、大分県ではすでに30年まえから県民オペラが発足しその活動は海外にまで及び、好評を博していると聞いている。徳島にこうしたオペラが根付くことは喜ばしい限りである。

 しかし、今回の県民オペラ発足の経過については、素朴な疑問もある。どのような方法で公募を周知徹底してきたのだろう。過去に県内で活躍してきた音楽家たちの顔ぶれが見えないのは寂しい。公募によるオーディションの結果集まったという意欲ある人たちには敬意を表するが、公の立場での将来的な活動を考えるならば、公募の方法など、もう少し慎重に事を運ぶ必要があったのではないだろうか? 県内にはこれまでに声楽界或いは音楽界で活動をしてきた実績ある団体がいくつかある。これらの先行の団体の協力なくして県民オペラを運営して行くことは、かなり難しい事ではないのだろうか?

 今回の県民オペラ旗揚げの経緯は、いわば、こうした既存の団体を出し抜いた形となっているのではないだろうか? 狭い音楽界、いずれどこかで顔を合わすことになる。根回しと言うと聞こえは悪いが、この徳島で末永くつきあって行かねばならない仲間たちへの気遣いも必要だったのではあるまいか? 今からでも遅くはない、11月の旗揚げ公演に向かって声楽界はもちろんのこと、音楽界が力をあわさなければ、県民オペラを名乗ることも、いい演奏を期待することもむずかしい事となるだろう。

 三木さん念願の徳島県民によるオペラの誕生を素直に喜びたいが、実状はこうした経緯による、複雑な状況を生み出しているのではないだろうか?
 当事者並びに音楽に関心を持つ諸氏の闊達な意見をお伺いしたいものである。

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