金髪

 ある日突然自分の娘が金髪になったとしたら、世の親はどんな反応を示すのだろう? 今私はそういう状況に直面している。

 その日、娘は帰宅する前に金髪にした旨の電話をしてきた。親のショックをやわらげるためにとの苦肉の策だろう。前もって金髪にしたという報告を聞いていたとはいえ、その時はまさに「 目が点になった」のである。私には黒い髪をした娘のイメージしかなかったので、果たして金髪が似合っているのかどうかさえわからない。見慣れた娘の頭の上に、突然金色の鳥が巣を作ったような感じなのだ。

 アメリカ映画「紳士は金髪がお好き」のマリリンモンローの金髪は確かに魅力的だ。だが彼女も本来は赤毛で、金髪にすることによって女優としての人気を勝ち得たというではないか。アメリカのような多民族の国家には髪の色もいろいろあるので、赤毛が金髪になっても、特に違和感がないように思うが、日本では事情は違う。チャパツ(茶髪)という言葉が市民権を得るようになり、最近は金髪といわず、緑や赤のカラフルな髪すら見られるようになったとはいえ、黒髪を美しい女性の条件としてきた日本の歴史の中ではやはり抵抗がある。

 だが、考えてみれば娘達の問題だけではない。白髪が増えたら染める人もいるし、髪の毛が少なくなれば、かつらや増毛法に頼る人もいるではないか。毎朝鏡に向かってヘアースタイルを整えるに費やす時間も大変なものだ。かように人は男女を問わず頭髪には格別の思い入れをもっているものなのだ。金髪にしたというだけで批判するにはあたらない。

 が、金髪というのは、金色に染めるのではなくて、薬品によって脱色するのだという。あの黒い髪を脱色するのだから、相当強い薬品に違いないし体にも悪いのではないだろうか。問い正してみると、確かに強力で肌に近い部分にはあまりかけられないという。おかげで生え際などは黒い髪がそのまま残っている。
いろいろ考えてみたが、当の娘は親の心におかまいなく金髪の頭でゴロゴロしている。

 娘の金髪騒動に家族の反応もさまざま、母親は嫌悪の表情を見せたが、以外なのは祖母の反応「ようにおうとる、かっこええな」娘が有頂天になったのはいうまでもない。
髪の色で頭の中身が変わるわけでなし、単なる一時的なファッションと思えば許せるか、と父親は思う事にしたのである。


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