川竹道夫エッセイ集
徳島新聞「視点」

発泡酒に期待

ビールの味はその日の体調によって随分違った味に感じるものだ。最近のこと晩酌の「ビールの味がちょっと違うな..」と缶のラベルを見た。馴染みのある顔をしている。しかしだ、よくよくみると発泡酒と書いてある。「なになに、発泡酒だと、けしからん、こんなものを神聖な食卓に出しおって..」と思ったのは昔のこと、いやなんと結構なお味で、ちょっと違った味のビールとして十分いけるのではないか、と気づいたものである。
 1994年に初めて発泡酒が発売されたとき、物好きで飲んでは見たものの、あまり頻繁には飲みたくないと言うのが正直な気持ちであった。ところがあれから6年の熟成期間を経て、発泡酒市場を見てみるとなんと大手メーカーの開発合戦の成果もあって、缶のラベルまでビールを見まごうデザイン。そういえば、たまにテレビで見るビールの宣伝だと思っていたのが、実は発泡酒の宣伝であることに気づいたのもつい最近のことだった。
 売り上げの統計を調べてみると、2年ほど前から発泡酒のシェアがどんどんのびている。当然その分、ビールが飲み悩んでいるわけだが、メーカーは同じなのでたいした打撃にはならない。心配したのは酒税の収入の減ったお国。発泡酒はビールに似ているからと言う理由で、増税案を持ち出した。
 聴くところによると、ビールと発泡酒の違いは、麦芽の含有率で法的に決められているという。麦芽の含有率66%以下のものを発泡酒というらしいが、このほかにも発泡酒には他の雑穀などを入れるのに制限がなく、税金も麦芽の含有率で決まるそうだ。
発売当初の不評にもめげず、新たな発泡酒開発に心血を注いできたメーカーのたまものだろうか? 当初ビールの安価な代用品かと思っていたが、よくよく味わってみると、ビールの味とはちょっと違うが、それなりに楽しめる味だ。気がついて調べてみるといろんな種類のものがあり、のみ比べても結構楽しめそうだし、今後の新製品にも興味津々だ。
 とにかく発泡酒の味は大変おいしくなった。価格もビールよりは3割方も安いとあって消費はまだまだ伸びるだろう。景気の先行きに明るさの見えない毎日、おいしくて安い発泡酒の増税に収入源を求めようとする、政府のやり方は、庶民の楽しみを取り上げるようでどうも賛成できない。


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