川竹道夫エッセイ集
徳島新聞「視点」

IT革命

IT革命とは何なのだ? 毎日インターネット・ビジネスに参加している私でさえ、最近のマスコミのIT革命への過度な期待的論調は気になる。書店に並ぶIT革命に関する本は、この千載一遇のビジネス・チャンスを逃す手はないとまくし立て、そのノウハウを説く。確かにIT(情報技術)の発達によって、流通が代わり、経済の流れが大幅に変わるだろう。世界は狭くなり今後さらに普及率が高まるに従って、その影響も大きくなる。この流れに乗り遅れたら、ビジネスは成り立たなくなるかも知れない。
 しかし、このIT革命期待論は、楽観的に過ぎはしないだろうか。IT機器が普及しインターネットへの接続が増えさえすれば電子商取引が増え、結果的に電子ビジネスが成長し、さらに電子ビジネスをすれば巨額の収益を上げられるという錯覚の上に成り立っている。
先行しているアメリカでさえ、電子ビジネスはまだ投資の段階である。一部の業界にはいくつかの成功例はあるが、殆どは電子ビジネスによるIT革命の期待への投資である。
IT関連企業への投資が増え、株価が高騰すればこの分野の資金は巨大なものにもなり、有能な若者がこぞってIT産業への就職を目指す。これらはあくまでもITへの期待感がさせることであり、実際にITが世の中に革命的な変革をもたらし、それが人々の生活に有益となるかどうかは、全くの未知数なのである。過度な期待感によって、投資をあおり、経済活性化の切り札にしようという政府の論調には首を傾げたくなる。
 既にIT産業の株価の上下が世の中の経済を上下させる力をもつようになってきているのも事実だが、果たしてこれが革命と言うほどのことにつながるのかと言えば、かなり疑問が残る。ITの発達によって、我々の生活が代わろうと、リストラが起ころうと、経済構造が大幅に代わろうと、かつての産業革命がもたらした様な、歴史的な革命と呼ぶのは行き過ぎではないのだろうか?
 インターネットによって世界が一つになり、人々はそれぞれの持つ情報の多少と、その使い方によって大きく利益が差別化される、こんな時代はすぐそこに来ている。しかし、世界が一つになって困るのは経済大国日本、声高にIT革命を唱えるのも結構だが、いずれはじけるITバブルをこれ以上ふくらまさないような配慮も必要だと思うが..。


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