川竹道夫エッセイ集
徳島新聞「視点」

インターネット裁判

 4月に横浜市に住む画像処理ソフト「FLMASK」の製作者である会社員が逮捕され、わいせつ図画公然陳列幇助の疑いで起訴された事件は、インターネット上で摘発された事件として、関係者に大きな波紋を投げかけた。一部では、「モザイク消しソフト」と呼ばれ、ソフトウェアそのものに違法性があるかのような報道がなされた経過もあったが、あれから4ヶ月、今日(21日)大阪地裁で初公判が開かれる。
 被告の会社員が作成した画像処理ソフトは、画像にボカシを作る機能と、元の正常な画像に戻す機能を合わせ持っているもので、このソフトを利用すると、通常日本ではわいせつとされている画像を処理して公開することが出来、同じソフトを利用して復元することもできる仕組みとなっている。ちなみにアメリカでは、規制が緩やかであるので、このようなソフトは必要なく、日本で云うわいせつ図画が堂々と公開されている。
 被告である作者の開設していたホームページには、他のホームページへのリンク機能(通路)が設けられており、そこにはこのソフトによって処理された画像が公開されていた為に、わいせつ図画公然陳列幇助にあたるというのが検察側の言い分である。
 これに対し、被告側は異例とも思える、21人の弁護団を結成し、リンク機能は幇助罪にあたらないとして、被告の無罪を主張している。また、この画像処理ソフトのユーザーグループは、作者である被告を支援するためのホームページを開設し、支援活動に乗り出している。
 インターネットは自由に情報を交換できることが最大の魅力であるが、リンクする行為に対して、罪が課せられるとしたら、それはインターネットそのものを真っ向から否定してしまうことではないだろうかとの危惧もあって、インターネットユーザーは裁判の成りゆきに大きな関心を寄せている。こうした経過は、インターネットといった化け物のようなメディアの導入を認めた段階で、充分に予想できたはずなのに、現行の刑法で無理矢理取り締まろうとする検察側のやり方には、インターネットを自由自在に操るデジタル人類に対する、言い様のないあせりが感じられて哀れですらある。
ともあれ、検察側、弁護側の言い分、今後の展開が注目される。


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