川竹道夫エッセイ集
徳島新聞「視点」

市民ホールの行方

 徳島市に音楽専用の市民ホール建設の計画が持ち上がったのは、もう随分まえのこと、確か小池市長は選挙に初当選する際の公約にも掲げていた。場所は旧動物園跡地、動物園の移転は終わり、そろそろ着工してもいい時期に来ているのではないかと思うのだが、未だその気配は見えない。動物園跡地から発見された遺跡の発掘調査がまだ終わらないのがその理由らしいのだが、計画そのものを疑問視する意見も議会では出はじめているという。
 徳島市内で音楽ホールというと文化センターや郷土文化会館が上げられるが、どちらも小さな編成の器楽のコンサートには大きすぎる。望まれるのは客席数300名前後の響きの良い音楽専用ホールだ。大塚製薬のヴェガホールは客席数においても響きにおいても申し分ないのだが、一般の人が使用するにはいろいろ厳しい条件があり敷居が高い。近辺の市町村には比較的最近に出来た手頃なホールがいくつかある。北島町の創世ホール、羽ノ浦町のコスモホール、板野町のさくらホール、小松島市のミリカホール、阿南市の夢ホールなどである。創世ホールなどは週末は殆ど予約で満杯状態だという。
 諸事情を照らし合わせると、徳島市に音楽専用のホールの必要性は述べるまでもないのだが、現実には諸事情により着工が遅れている。何故なのか分からないが、聴くところによると、建設に必要な積立金の予算計上が過去3年間ストップしているという。景気が低迷する中で、当面は環境、福祉、介護などのさしせまった問題に必要な予算が向けられて、文化行政への予算はなおざりにされているのではないのだろうかと疑いたくなる。
 響きの良い手頃なホールが出来れば、県内市内の音楽家達はもとより、内外のアーティストを招いてコンサートを開催し、生の音楽を楽しむ人たちがそこに集まり、週末は音楽を鑑賞して一時を過ごす事が出来る。こんな贅沢な楽しみの場所を提供できれば、市民の文化の向上に貢献するという事になるのだが、とりあえずこんな理想を夢見ている私たちのために、市民ホール建設工事着工予定の期日くらいは明らかにして欲しいものだ。


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