川竹道夫エッセイ集
徳島新聞「視点」

定期演奏会

 先日一通の演奏会への招待状を受け取った。徳島大学ギターアンサンブル部演奏会と書かれていた。すっかり忘れてかけていたが、以前はこのクラブも毎年定期演奏会を開催していたはずだった。いつの頃からか、大学内でのサークル活動が低迷しているという噂を聞き、これも時代の流れかと思っていたが、こうして招待状を受け取り、一時は廃部にまで追い込まれそうだったという経緯を聞くと、関係者の熱意が並々ならぬものである事が分かった。
 学生が仲間達を集めて自主的に企画を立てて、演奏会の開催に至るまでには大変な準備とエネルギーがいる。もちろん一人では出来るはずもないし、リーダーシップを取れる人や、それを支える人たちが心を一つにしなくてはならない。こうしたノウハウは、先輩から後輩へと受け継がれていくものなのだが、10数年ぶりとなる今回の演奏会では、出演者はじめ、関係者全員が初めての経験言うことなので、苦労の程が推察された。
 さて、7月1日その徳島大学ギターアンサンブル部演奏会(定期とは書かれてない!)、目指して、徳島市シビックセンターを訪れた。受付には新入生らしき学生達がならび、ロビーでは時間を持て余した学生達がたむろしている、さながら大学の部室が引っ越して来たようなにぎわいだ。客席に入りしばしの緊張した雰囲気の中、開演を伝えるアナウンサーがステージにたつ。初々しい声に新鮮さを感じながら、いよいよ本番が始まる。その昔、私自身も経験したクラブ活動の一年間のクライマックスの瞬間だ。
 プログラムはアコースティックギターのソロに始まり、クラシックのソロ、引き語り、アンサンブルと多彩を極めた。上手なものもいれば、そうでないのもいるが、それぞれの思いがギターを通して伝わってくる。初めてのコンサートということで、緊張感もあったろうが、ステージに集う若者達の清々しい演奏に心も晴れる思いで会場をあとにした。
 昨今の若者は、集団で一つのことをなすというのが苦手な世代だと聞くが、久しぶりに聞いたこの日のコンサートでは、そうした考えを新たにし、日本の将来に明るいものを見た気がした。願わくは、このエネルギーを毎年持続して、定期演奏会として再び定着させて欲しいものである。


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