のどじまん

 おなじみの鐘の音と共に始まる日曜日午後の風物詩、NHKのど自慢。沢山の応募者の中から選抜された人たち、生真面目に歌っていた一昔前とは違って、格段に歌唱力もアップし、巧みな振りやダンス、パフォーマンスもお手のもの。さすがにカラオケで鍛えただけのことはある。

 時々テレビで見るこののど自慢、最近ちょっと気になっていることがある。
舞台左に陣取った伴奏者が最近はぐんと少なくなっている。ドラムとギターは本物だが、シンセサイザーの登場によって、ストリングスもブラスもすべて鍵盤に取って代わられてしまったのだ。それでも編曲に工夫を凝らして、出場者の伴奏役を見事に務めている。

 さて、出場者全員の歌が終わったところで伴奏者が紹介される。「...伴奏は以上の皆さんでした!」と締めくくった後に、ゲストの登場と言うことになるのだが、そのとき突如として音楽が生演奏からカラオケに変わるのである。それまでのコンパクトにまとめられた伴奏とは違って、壮大なオーケストラが突然やってきたかのように、音量も一段と大きくなっている。この番組には毎週ゲストのスターが審査役もかねて2名ほど参加するのだが、毎週このパターンである。いつからこうなったのかわからないが、なぜなのだろう。

 アマチュアには、生伴奏がいいがプロにはカラオケの方がいいと言ってるようだ。CDやカラオケで聞き慣れたオリジナルの伴奏で聞いてもらいたいから、という理由も成り立つが、歌手の方がいつも聞き慣れた伴奏でないと歌えないのだろうか。いや、そんなことはないだろう。ひょっとしたら、ホントはCDを流して置いて、会場では口をパクパクやってるんではないか? 伴奏者が、その曲の伴奏を演奏できないとは考えられないし、したくないとも考えられない。いろいろ考えたがどうにも腑に落ちない。

 生演奏の良さは、時と場所、雰囲気によって、伴奏も代わり歌も変わるところに妙味がある。伴奏とはいえ、足を運んでくれたお客さんに、録音されたものを聞かせなければならない理由がわからない。第一、伴奏者に随分失礼な話ではないか。熱唱するゲストのバックに、時折写し出される伴奏者のうつむき加減のばつの悪そうな表情に、カラオケに職を奪われた、かつての実演家の哀愁を感じると言ったら言い過ぎだろうか?


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