ミドリガメ

 近所を散策の途中、田宮川にかかった橋の上から3匹の亀が泳いでいるのが目に止まった。あたかもパラシュートで降下する空中遊泳部隊のように、顔を中に向けて三匹が輪になっていた。二匹は30cmはゆうに越える大きさであった。水面から顔をのぞかせると、首筋のハッキリした線と、赤い模様でその亀がミドリガメの成長した姿であることが分かった。二匹が親亀で、小さいのは子亀としたら、親亀の一方は日本在来のクサガメで、あの子供は案外混血の二世なのかも知れないぞ、などと考えながら帰宅した。

 ミドリガメはミシシッピーアカミミガメというのが正しい名称だが、生後1~2ヶ月の頃は甲羅が美しい緑色をしている事からミドリガメの名称で親しまれ、1963年頃にはペットとしてブームを呼んだ。孵化後一年くらいで甲羅の緑色は消え、普通の亀のような褐色になってしまう。育てきれなくなって捨てられたミドリガメは、いつの間にか日本全国に繁殖してしまったらしい。その名が示すように、目の上の耳に当たる部分に赤い模様があるので在来の亀とはすぐに見分けられる。

 アメリカザリガニや牛ガエル(食用ガエル)も同様に外国から食用として持ち込まれた帰化動物であるが、今ではすっかり日本の市民権を得ている。思えば小学生の頃、この川にはアメリカザリガニが沢山いた。殆どつかみ取り状態でバケツ一杯のザリガニを持ち帰り、食卓を飾ることもあった。だが、このザリガニもきれいな水が好きなのか、生活排水に汚れたこの川では余り見られなくなった。そういえばあのうるさい牛ガエルも余り見かけなくなった。

 北海道では北アメリカ産のアライグマの野生化による農作物の被害が目立ち、ヌートリアという南アメリカ原産のネズミの親分のような動物が日本のあちこちの河川近くで繁殖し、出没しているという話を聞く。また東京工大のキャンバスには、千羽を越えるスリランカ生まれの大型インコが野生化し、群をなして住み着いているという。いずれも繁殖力、適応力が旺盛なところに加えて、天敵がいないことも手伝って、あっという間に、日本に帰化してしまったものらしい。

 三方張りにされた、きれいとは言えない田宮川を、悠々と遊泳するミドリガメに、「生態系ビッグバン」という言葉の意味を知らされた思いだった。



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