川竹道夫エッセイ集
徳島新聞「視点」

若きギタリスト

 日本のクラシックギター界には、村治佳織(21才)と木村大(19才)という若きスーパースターがいる。どちらもギタリストの父親を持ち英才教育の結果生まれたギタリストである。村治佳織は昨年徳島を訪れ、多くのファンにギターの素晴らしさを伝えてくれた。また、9月1日県郷土文化会館で催された、ふれあいコープ主催による木村大コンサートでは、開館前から長蛇の列が出来る程の盛況で、木村大の人気の高さが伺えた。
 いま、彼らと同じ道を歩もうとしている少年ギタリストがこの徳島にいる。徳永真一郎君(12才)がそれである。彼は徳島市内の加茂名小学校に通う6年生の小学生だ。
彼がギターの道を歩み始めたのは小学3年生の時、たまたま趣味でクラシックギターの練習に励む父親の姿に魅せられ、自分もギターが弾いてみたくなったという。父親に連れられて私の元を訪れたあどけない少年は、非凡な才能を見せ、めきめきと上達し、1999年小学5年生でコンクール第4位に入賞し、全国のギタリストを目指す少年達の仲間入りをした。今年に入り3つの学生ギターコンクールで第1位、第1位、そして第2位と大変な成績を残した。技術的な面の完成にはまだ少しの時間が必要であるが、精神面においてこれだけの感性と表現力を備えた人材は多くはいない。
 さる9月9日川内町の喫茶「みき」にて彼の祝勝記念演奏が披露された。ほんの3曲の演奏であったが、聴衆は彼の演奏に聴き入り、演奏が終わった後は割れんばかりの拍手と歓声が期せずしてわき起こった。口々に演奏の素晴らしさをたたえるささやき声が聞かれ、いままで耳にしたことのない芳純な演奏に驚いた表情を隠せない。
まだあどけなさを残した小学生ではあるが、ステージに立つ彼の姿は、賞賛するに値する若きギタリストの凛々しい姿であった。
 徳永真一郎君は、我々徳島に住むギター仲間にとっては、たいへん眩しく、誇り高い存在である。いずれ、数年もすれば彼の演奏が音楽界の注目を集める存在となることは想像に難くない。私たちは同じ徳島から世界を舞台に活躍出来る逸材が育ちつつあることを目の当たりにし、ワクワクとした期待感で気持ちが一杯である。
徳島の誇る若きギタリスト徳永真一郎君に、この場を借りてエールを送りたい。


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