川竹道夫エッセイ集
徳島新聞「視点」

音楽協会コンサート

10月2日、郷土文化会館で催された「感動をよぶ、クラシックの饗宴」第28回音楽協会コンサートを聴いた。今回で28回を数えるこのコンサートは徳島県民文化祭の主催行事として毎年開催されている。28年間続いてきたことは評価できるが、決して平坦な道のりではなかった。数年前までは音楽協会コンサートは、客の入りの悪さには定評があった。
当時、このコンサートを「寒いコンサート」と揶揄した演奏者がいた。まばらな客席から吹いてくる風が、ステージ上の演奏者の横を通り過ぎて行き、スースーする、と言う笑えない冗談が飛び出す状況であったのだ。ところがここ2,3年の間に着実に聴衆は増え、主催者発表によると、今回は500名近い入場者であったという。
 この日出演した団体は、徳島少年少女合唱団、徳島現代音楽研究会、徳島県声楽協会、徳島フルート協会、徳島ブラスアンサンブル、デンナークラリネットアンサンブルの6団体。県内で活躍する音楽団体の協演とあって、文字通り「クラシックの饗宴」となった。
 徳島少年少女合唱団の天使の声の合唱ベートーヴェンの「喜びの歌」に始まり、フルートによる現代曲の独奏、ステージ衣裳も華やかなソプラノ独唱による日本歌曲とオペラのアリア、休憩のあとは透明感のあるつややかなフルート独奏、輝かしいブラスによる舞曲集、最後は26名を擁す初々しいクラリネットアンサンブルによる、モーツァルトの小夜曲で締めくくった。
 徳島県音楽協会に所属する団体は13団体あり、年に一度のこのコンサートは、限られた時間の中で、出演を希望する団体が多い場合は出演できない厳しい状況でもある。
県内ではこのように所属の異なった団体が一カ所に集い、お互いの芸術を披露しあう場所はあまり多くなく、演奏者にとっても、観客にとっても、音楽協会コンサートの存在は大変貴重なものであるといえる。来年もまた29回目のコンサートが開催されるであろうが、ますます充実したコンサートで県民を楽しませて欲しいものである。音楽協会では現在も新規加入団体を募集している。県内で演奏活動されている団体は加入され、共に演奏の場を持たれては如何であろうか。


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